最近は、排出事業所のコンプライアンス(法令順守)の高まりのため
取引業者に収集運搬業の許可を求めたりすることが多いようです。
ここでは、収集運搬業の許可を取るための許可の要件を確認します。
許可の必要な地域
収集運搬業の許可は、廃棄物を積み込むところ(排出事業者)と
降ろすところ(処分先)を管轄する都道府県の許可を受ける必要が
あります。
例えば、埼玉県の排出事業所から出る廃棄物を東京都の処分業者まで
運搬する場合は、埼玉県と東京都の許可が必要となります。
途中で通過するだけの自治体の許可は必要ありません。
建設業が本業で収集運搬業を兼業する場合は、現場として予想される
都道府県の許可を受けておく必要があります。
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収集運搬するために必要な施設を有すること
施設とは、車輌、船舶、運搬容器などのことです。車輌にも種類はたくさんあり、例を挙げると、
キャブオーバ(平ボディー)、脱着式コンテナ専用車(アームロール)、 ダンプ、セミトレーラ、フルトレーラ、塵芥車(パッカー車)、吸引車(バキューム)などがあります。
許可申請には、有効な車検証の写しと
車輌の写真を添付します。
車検証には、所有者又は使用者が申請者になっていることが望ましいでしょう。
申請者が所有者又は使用者のどちらにも該当していない場合、自治体によっては許可を受けられない場合が
ありますのでご注意下さい。
また、所有者又は使用者欄が申請者でなくて許可を受けられる場合でも、車両の賃貸借契約書や使用承諾書
などが必要になります。
運搬容器についても注意が必要です。燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、ばいじんなどは、飛散や
流出を防ぐために、ドラム缶(汚泥・廃油・ばいじん等)やポリタンク(廃酸・廃アルカリ等)、フレコン
などが必要になる場合があります。
また、車輌の荷台の形状によっては、これら以外の廃棄物であっても容器などが必要になる場合もあります
ので確認が必要です。 -
経理的基礎を有すること
経理的基礎とは、簡単にいえば、事業をするだけの財務的基板があるかどうかということです。
これらの判断基準は、自治体によって異なっていますので、申請自治体ごとに確認が必要です。
一般的な添付資料としては、直近3年分の決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、
個別注記表)と納税証明書(法人の場合は法人税に関するもの、個人の場合は所得税に関するもの)が
必要になります。決算期を3年分迎えていない法人でも収支計画書などの添付により申請は可能です
(自治体によっては、預金の残高証明書などを要求されます)。
直近の決算で「債務超過」の場合、追加書類を必要とする自治体が多いようです。「債務超過」とは、
単に損益が赤字かどうかということではなく、資産よりも負債が多いことを言います。
従って、損益が赤字であっても債務超過とは限りません。逆に損益が黒字でも債務超過ということも
ありえます。
追加書類とは、中小企業診断士又は公認会計士の診断書などです。
また、赤字決算の場合に、収支計画書(申請者が作成可)の添付を求める自治体もあります。 -
環境大臣認定講習会を受講すること
意外と厄介なのが、この講習会です。この講習会は、各都道府県単位で、産業廃棄物協会が実施しており
ますが、日程がまばらで、定員数も限られているため近くの会場で受講できるとは限りません。
急いでいる場合は、 近くの会場が取れないと遠方の会場に泊りがけで行くようなことになってしまいます。
また、講習会は基本的には、法人の場合は取締役、個人の場合は申請者本人が受講する必要があります
(政令で定める使用人を講習会修了者とすることもできますが、政令で定める使用人の定義が自治体により
異なりますので注意が必要です)。
収集運搬業の新規講習の場合は、2日間の日程で受講しなければならないため、役員が2日空けるのは困る
という会社もあると思います。しかし、この講習の修了証がなければ申請できませんので、許可を取ろうと
思ったらとにかく受講するしかありません。
なお、講習の最後に試験を行い、合格しないと修了証はもらえません。中には不合格になる方もいます。
講習会の予約は各都道府県産業廃棄物協会に問い合わせましょう。講習はどこの都道府県で受けても構い
ません(全国共通です)。全国の講習会の日程と予約状況を確認するには、日本廃棄物処理振興センターで
ご確認下さい。当事務所にご依頼予定のお客様には、講習会受講の手引きを無料でお送りします。
講習会受講の手引きお申し込みページへ
以上が基本的な、法律上の許可の要件です。
その他細かいことを挙げればきりがありませんが、もう少し注意点を解説したいと思います。 -
その他の注意点
収集運搬業の許可は、積替え保管ありとなしに分かれます。積替え保管施設を設ける場合は、中間処理施設
に準じた手続きが必要になりますので、積替え保管なしの場合の許可申請の手続きとは分けて考える必要が
あります。
申請に当たっては、排出事業者と処分業者の予定を決めておく必要があります。ほとんどの自治体で、
どの都道府県市の排出事業場から産廃を収集し、どこの処理施設に持っていくかの記載を求められます。
この記載により、許可を受けられる廃棄物の種類が決まるのです。例えば、排出事業者が建設業者の場合は、許可を受けられる廃棄物の種類としては、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類となります。
こういった、排出事業者の業種によって廃棄物の種類が変わりますので、どういうところから出たものが
どの種類に該当するのかをよく確認する必要があります。
また、処分先についても、その廃棄物の種類に対応した許可をもっている業者を選ぶ必要があります。
申請書には、処分先業者の許可証を添付する必要がある自治体が多いのでご注意下さい。
また、石綿含有産業廃棄物や自動車等破砕物などに関しては、排出事業者と処理先がないと、それらを除く
限定が付く場合もあります。
簡単なようで意外と難しいのが収集運搬業の許可申請です。廃棄物の種類を一つ落としたために、
その後必要に迫られて種類の追加の変更許可申請をしなければならないといったことはよくあります。
申請手数料も馬鹿になりませんので、できれば一回の申請で多くの種類を取れるようにしたいものですね。
そして書類を作ってみると意外と労力がかかることが分かります。時間的ゆとりのある方はご自身で申請
することも良いかもしれませんが、本業がおろそかになるくらいであれば、われわれ行政書士を是非ご活用
下さい。
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